2026/08/21(金)
その広さ、本当に必要ですか?——家族の「距離」を設計するという発想

「せっかく建てるなら、広い家がいい」
注文住宅の家づくりの打ち合わせをしていると、多くの方が、そうおっしゃいます。
子ども部屋、書斎、大きなリビング、たっぷりの収納。
広さは、安心の証。そう感じられるのは、とても自然なことだと思います。
もちろん、暮らしに必要な広さはあります。家族が窮屈に感じる家、日々の生活に無理が生じる家。それが豊かな暮らしを支えるとは、私も思いません。
けれど、私はいつも、少しだけ立ち止まって考えていただきたいのです。
その広さは、本当にご家族の幸せにつながっていますか。

広さは、数字で測れる価値でしかない
坪数。㎡数。収納量。これらはすべて、数字で測ることのできる価値です。つまり、定量的な価値です。
広いか、狭いか。多いか、少ないか。足りているか、足りていないか。分かりやすい。比較できる。だからこそ、多くの人がそこに安心を求めます。
でも、数字で測れるものだけを積み上げていけば、豊かな家になるのか。私は、そこに強い疑問を持っています。
広さそのものが悪いわけではありません。問題は、その広さがどう暮らしの中で使われるのか。そして、その広さや間取りが、ご家族の関係性にどんな影響を与えるのか、です。
必要以上の広さは、ときに家族の時間を分散させます。
大きなリビングの隅々で、それぞれが別々にスマホを見ている。広い個室にこもり、子どもが家族と顔を合わせる時間が減っていく。掃除も、光熱費も、メンテナンスの負担も、住み始めてから静かに重くなっていく。
数字の上では「豊かな家」に見えても、そこに暮らす人の心や関係性が豊かでなければ、それは本当の豊かさとは呼べないのではないか。私はそう思うのです。

問うべきは、広さではなく「距離」
私たちが本当に大切にしているのは、㎡数そのものではありません。家族と家族の「距離」です。
家とは、単に生活するための器ではない。私はそう考えています。家族の関係性を育てる場所。それが、家の本質です。
キッチンに立つ人と、リビングでくつろぐ人の視線が、ふと交わる。子どもが帰ってきた足音が、家のどこにいても伝わる。一人になりたいときには、静かにこもれる場所がある。
家族は、いつも一緒にいれば幸せというわけではありません。必要なときには気配を感じられる。一人になりたいときには、そっと離れられる。それでいて、完全に孤立するわけではない。どこかでつながっている。
その絶妙な距離感こそが、暮らしの豊かさをつくる。私はそう確信しています。
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これは、坪数を増やすこととは、まったく別の技術です。むしろ、必要以上に広さを求めないことで、家族の気配が自然と重なり合う家になる。
広さを最大化するのではなく、関係性を最適化する。私たちはそこに、数字では測れない価値を見出しています。
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未来の記憶は、広さでは測れない
Kizukiが掲げる「未来の記憶を、築く家」というコンセプトも、ここに深く根ざしています。
子どもが将来、ふと実家を思い出すとき。思い出すのは、リビングが何帖だったかではないはずです。
家族の笑い声が響いていた食卓の距離感。料理をする音。階段を上がる足音。誰かがいつもそこにいた気配。一人で泣いた小さな場所。安心して眠れた夜の空気。
そうした、数字にならない記憶こそが、その人の人生を、そっと支えていく。
だからこそ私たちは、お施主様との家づくりの打ち合わせで、こうお聞きすることがあります。
「本当にその広さ、必要ですか」
一見、営業的には損な質問かもしれません。それでも、私たちはこの問いを避けません。なぜなら、これは私たちの志——「100年後の子どもたちに責任を持ち、豊かにする」——から生まれる、譲れない問いだからです。
広さを削ることは、単に面積を減らすことではありません。家族の距離を整えること。暮らしの質を高めること。将来の負担を減らすこと。そして、数字では測れない記憶の密度を、高めることです。
家づくりとは、床面積を設計する仕事ではない。
家族の距離を設計する仕事です。
広い家が、悪いわけではありません。
ただ、広さを求める前に、一度だけ問うてほしいのです。
その広さの先に、あなたが本当に残したい家族の風景はありますか、と。
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