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2026/09/04(金)

我が子のように育てた家。町田市で晴耕雨読の時を過ごす–ルームツアーを終えて

我が子のように育てた家。町田市で晴耕雨読の時を過ごす–ルームツアーを終えて

こんにちは、Kizuki(小泉木材)代表の小泉です。

 

町田市に完成した、あるご家族の住まい。
この家で営まれている暮らしを追った3本のルームツアー動画が、先日、すべて公開となりました。
アトリエを軸に、「働くこと」を描いた回。
リビングとキッチンを軸に、「暮らしが積み重なっていく時間」を描いた回。
そして書斎を軸に、「静けさの中で創作すること」を描いた回。
同じ一軒の家でありながら、そこには三者三様の物語がありました。

すべての撮影を終えた今、この家が生まれるまでの時間を、あらためて振り返ってみたいと思います。

 

出会いは、構造・断熱見学会から

 

 

ご夫婦と初めてお会いしたのは、2023年10月7日。
横浜市内で開催した、構造・断熱見学会でした。
その翌月、11月2日に初めてのご面談を行いました。
物静かな語り口の中に、はっきりとした芯を持ったご夫婦でした。

自分たちは、これからどのように生きていきたいのか。
なぜ、そのように生きたいと考えているのか。
こちらから深く尋ねるよりも前に、一つひとつの言葉を選びながら、丁寧に、静かに話してくださったことを、今でも覚えています。

その日、私はKizukiが掲げる志についてお話ししました。
「100年後の子どもたちに責任を持ち、豊かにする」

その話を聞いた施主様は、こうおっしゃいました。
「その志は素晴らしいと思います。ただ、そこまでの覚悟を持つ会社に依頼することは、正直、少しハードルが高いとも感じています」

とても真摯な言葉でした。
だからこそ、私も真摯にお答えしたいと思いました。

「これから計画していく大切な家を、将来、次の世代へ引き継ぐことになるかもしれません。
引き継いだあと、またその家に、ふらっと立ち寄ってみてください。
そこには、子どもたちが笑顔で走り回る、とても豊かなご家族が住まわれているはずです。
ご自身たちが想いを寄せ、大切に建てたその家が、次の世代の豊かな暮らしを支えている。
その未来を想像できるとしたら、私たちと共に家を建てる理由にはなりませんか」

静かな時間が流れました。
言葉を重ねたわけではありません。
けれど、その静けさの中で、何か大切なことが通じ合ったように感じました。

 

「レベルの高い土地」を、自らの足で見つける

 

そこから、ご夫婦の土地探しが始まりました。
そして見つけてこられたのが、町田市にある現在の土地です。

駅からは、決して近くありません。
一般的な不動産の評価軸だけで見れば、積極的に勧められる土地ではなかったかもしれません。
しかし、その土地には畑があり、森が見えました。

利便性や資産価値だけではなく、そこでどのような毎日を送りたいのか。
暮らす人の視点で選ばれた土地でした。

私はこの土地を見たとき、思わず「レベルの高い土地ですね」とお伝えしました。
自分たちにとっての豊かさとは何かを理解していなければ、選ぶことのできない土地だったからです。

この土地を選んだ時点で、すでにご夫婦の「豊かさの尺度」は明確だったのだと思います。

 

性能を求める家づくりから、信頼して託す家づくりへ

 

家づくりを考え始めた当初、ご夫婦が重視されていたのは住宅の性能でした。
断熱性能、気密性能、光熱費。
数値で比較し、確認することのできる価値です。

もちろん、それらは快適で健康な暮らしを支え、家を長く残すために欠かすことのできない要素です。
しかし、打ち合わせを重ねるうちに、会話の中心は少しずつ変化していきました。

数字の話から、そこで過ごす時間の話へ。
比較の話から、信頼の話へ。
情報があふれる時代だからこそ、最後は専門家を信頼し、任せることが大切なのだと、施主様は話してくださいました。

すべてを自分たちで比較し、選び切ろうとするのではなく、考え方を共有できる相手に託す。

それは、決して判断を放棄することではありません。
自分たちが本当に大切にしたいものを明確にしたうえで、それを形にできる人を信じるという、主体的な選択です。
ご夫婦が比べ続けることをやめ、私たちに託してくださったこと。
その決断が、この家の隅々にまで、迷いのない設計を宿したのだと思います。

 

28坪の中に、いくつもの居場所を編み込む

 

 

 

敷地条件から導き出された建物は、延床面積約28坪です。
決して、大きな家ではありません。
けれど、この家には驚くほど多くの「居場所」が編み込まれています。

西側には、静かに仕事や創作へ向き合うためのアトリエがあります。
木格子の窓は、外から見ればこの家を象徴する存在となり、室内から見れば庭の風景を切り取る額縁になります。

玄関から一段下がった場所には、包み込まれるような心地よさのあるリビングがあります。
足元に設けた地窓からは、ソファに座ったまま庭の緑を眺めることができます。

階段の踊り場には、本を読むための小さな居場所を設けました。
床をあえて一段下げることで、通路の延長ではなく、気持ちを切り替えるための場所にしています。

そして、リビングの東側。
一段下がった先には、ご家族のための広い畑が広がっています。
朝、窓越しに作物の成長を眺める。
気になれば、そのまま外へ出て、土に触れる。
室内での暮らしと農の営みが、段差一つで地続きになっています。

広さだけで家を満たすのではなく、居場所の数で暮らしを満たす。
それが、この家で私たちが導き出した答えでした。

この土地は、風致地区にあります。
建物の配置や形状、緑化などに、さまざまな制約がありました。
けれど、制約は必ずしも、設計の自由を奪うものではありません。
条件があるからこそ、何を残し、何を削ぎ落とすべきかが明確になります。

この土地が持つ静けさや、森や畑との距離を丁寧に読み解いたことで、「晴耕雨読」というご夫婦の暮らし方が、より純度の高い形で建築になったのだと思います。

 

我が子のように、みんなで育てた家

 

工事期間中、施主様がこの家について語る言葉には、いつも共通した響きがありました。

「成長していく過程を見るのが楽しい」
「みんなで生み、育てていく宝物です」

家を、単なる商品や資産としてではなく、我が子のような存在として見ている。
そのまなざしに触れるたび、私たちも背筋が伸びる思いがしました。

家づくりの途中には、ご夫婦とスタッフで徳島県上勝町を訪れたこともありました。
その旅先の夜、奥様が家づくりへの想いを語ってくださいました。
その言葉を聞きながら、担当スタッフが思わず涙を流したことを覚えています。

それは、発注者と受注者という関係だけでは生まれない時間でした。
仕事という枠を超え、一つの家を共に育てる仲間として過ごした、家族のような時間でした。

この家は、設計や施工だけで完成したのではありません。
ご夫婦の想いと、設計者の思考と、職人たちの手仕事。
知識や技術だけでなく、互いに信頼し合いながら積み重ねてきた時間。
そのすべてが結晶となって、この家の姿になっています。

 

「彼ら」が、これからの季節を生きていく

 

 

私たちは、完成し、ご家族のもとへ送り出す家を、親しみを込めて「彼ら」と呼んでいます。

家は、完成した瞬間に価値が決まるものではありません。
人が暮らし、季節が巡り、さまざまな出来事や感情が積み重なることで、少しずつ、その家だけの存在へと育っていきます。

アトリエから生まれる創作。
リビングで重なっていく家族の時間。
書斎で紡がれる静かな思考。
畑で土に触れ、作物の成長を喜ぶ日々。

これから何十年という時間をかけて、このご家族の「未来の記憶」を、彼らは静かに受け止めていくはずです。

晴れた日は畑を耕し、雨の日は本をひらく。

とても素朴で、当たり前のように見える暮らしです。
けれど、自分の時間を自分の意思で選び、季節や自然と共に生きられることは、現代において、とても贅沢なことなのかもしれません。

100年後、この家は、どのような人たちに引き継がれているのでしょうか。
どのような笑い声を聞き、どのような記憶を抱えているのでしょうか。

その未来を想像すると、私はあらためて、この仕事が建物をつくるだけの仕事ではないことに気づかされます。
私たちがつくっているのは、これから生まれる時間を受け止めるための場所です。

我が子のように育てられたこの家が、ご家族と共に、これからどのような季節を重ねていくのか。
その続きを、私たちも静かに見守っていきたいと思います。

 

▶ 施工事例:【東京都町田市】豊かな緑と感性が響き合う。自然と共存する住まい

▶ お客様のお声:【東京都町田市】自然とつながる暮らし。ご夫婦の想いをカタチに

 

 

 

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