2026/11/06(金)
自由設計とは?大切な暮らしから考える家づくり

こんにちは、〈Kizuki〉代表の小泉です。
間取りや素材、広さや設備などなど。
「自由設計」と聞くと、何でも自由に決められることを想像されるかもしれません。
もちろん、それも自由設計の一つの側面です。
けれど私たちは、選択肢が多ければ多いほど良い家になる、とは考えていません。

要望には、まだ重みがついていない
多くのお客様にとって、家づくりは初めての経験です。建てようと思えば、叶えたいことは次々に出てきます。
その一つひとつは、もちろん大切な希望です。ただ最初の段階では、それぞれの希望にどれくらいの重みがあるのか、ご自身でもまだ整理されていないことが少なくありません。
例えば、「あったらいいな」や「できれば叶えたい」、「これだけは絶対に譲れない」というもの。それらが、同じ場所に並んでいる状態です。
家づくりを具体的に進めるには、まずこの希望を一度並べ直し、自分たちにとって何が大切なのかを整理していく必要があります。

優先順位が、その家族らしさを映す
だから私たちは、最初のヒアリングの前に、ご要望をいくつかのレイヤーに分けて整理してきていただいています。
まず絶対に叶えたいことを、3つ。その次に叶えたいことを、5つ。そして最後に、それ以外。
これは、希望を減らしていただくためではありません。一度立ち止まり、「自分たちは、この家で何を一番大切にしたいのだろう」と考えていただくためです。
優先順位をつけてみると、不思議とそのご家族らしさが見えてきます。
広いリビングが欲しいと思っていたけれど、本当に欲しかったのは、家族が自然に集まれる場所だった。
大きな窓が欲しいと思っていたけれど、本当に大切だったのは、その先に見える景色だった。
収納をたくさん欲しいと思っていたけれど、本当は、生活感を抑えて気持ちよく暮らしたかった。
要望そのものではなく、その奥にある理由にフォーカスすると、別の答えが見えてくることがあります。
私たちは、「何をしたいのか」だけではなく、「なぜ、それをしたいのか」を大切にしたいのです。
間取りは、目的ではなく手段
そして私たちは、間取りそのものを目的にはしません。家づくりの目的ではないと考えているからです。
大切なのは、その家で、家族がどんな時間を過ごしたいのか。子どもたちに、どんな風景を記憶してもらいたいのかなど、暮らしの目的が先にあり、その目的を実現するための一つの方法として、間取りがあります。
そのため、お客様から伺った希望を、そのまま図面の上に並べていくことはしません。
そのご要望の先に、本当に叶えたい暮らしは何なのかということを一緒に考えながら、設計者として空間に翻訳していきます。
実際に、あるお客様との打ち合わせでは、「人を呼ぶのが好き」という何気ない会話から、私たちからセカンドリビングをご提案しました。
もともと、お客様からいただいていた要望ではありません。けれど、そこで暮らし始めると、ご家族やご近所の方が自然と集まる場所となり、大正解だったと言っていただける空間になりました。
要望として言葉になっているものだけではなく、その人が何を大切にしているのか。そこに目を向けることで、最初にはなかった答えが見えてくることがあります。
ときには、ご希望をそのまま叶えることで、もっと大切なものが損なわれると考え、別の方法をご提案することもあります。
自由設計だからこそ、何でも足していくのではなく、何にフォーカスするのかを考える。私は、そこがとても大切だと思っています。
選択肢が無限にあることよりも、自分たちにとって本当に大切なものが分かっていること。そして、その大切なものに、しっかりと時間も、空間も、予算も使えること。
何かにフォーカスするからこそ、初めて見えてくる豊かさがあります。

私たちに委ねていただきたいこと
一方で、設計者、つくり手として私たちに委ねていただきたい部分もあります。
耐震性。
断熱・気密性能。
耐久性。
維持管理性。
こうした住まいの安全性や快適性、そして長く価値を保つために必要な部分には、私たち自身の判断基準があります。
そして、もう一つ。
その土地の光や風をどう読むのか。
どこから入る光が心地よいのか。
その先にある景色をどう暮らしの中に取り込むのか。
将来、家族の暮らし方が変わったときにも、その家が無理なく受け止められるか。
こうしたことも、設計者として考え抜くべき領域だと思っています。
お客様のご要望だからという理由だけで判断するのではなく、その家にとって何が本当に良いのか。そこには、専門家としての知識と経験、そして責任があります。
自由とは、すべてを自由に決めることではない
何を大切にして暮らしたいのかは、お客様が決める。
それをどうすれば最も豊かな住まいとして実現できるのかは、私たちが考え抜く。
お客様にしか決められないことと、私たちに委ねていただきたいこと。その両方があるからこそ、家づくりは成立するのだと思います。
そして、間取りは目的ではありません。そのご家族が本当に大切にしたい暮らしを実現するための、一つの手段です。
自由すぎることが、本当に豊かなことなのか。
何でも選べることよりも、何を大切にするのかが分かっていること。そこにフォーカスし、つくり手と住まい手がそれぞれの役割を果たしながら、一つの答えをつくっていく。
それが、私たちの考える「自由設計」です。

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