2026/10/30(金)
【災害への備え編】太陽光発電を、使える備えに

こんにちは、〈Kizuki〉代表の小泉です。
停電したとき、家の中で意外に早く困るものの一つが「冷蔵庫」です。
明かりは懐中電灯で代えることができます。
暑さ寒さも、高断熱の家であれば、外気温の影響を受けにくくすることができます。
けれど、冷蔵庫の中の食材はそうはいきません。
電気が止まれば庫内の温度は少しずつ上がり、時間が経つほど、食品を安全に保存することが難しくなっていきます。
そして停電は、必ずしも数時間で終わるとは限りません。
2019年の台風15号では、東京電力管内で最大約93万5千軒が停電し、停電は長期化しました。
暴風などによって1,996本の電柱が損傷・倒壊し、大規模な倒木などによって復旧作業そのものが難しい地域も生じています。
これは決して、遠い地域だけの特別な話ではありません。
私たちが家を建てている横浜でも、同じことが起こる可能性はあります。
冷蔵庫は、思っているほど長くはもたない

農林水産省は、2026年9月に公表した停電時の食中毒への注意喚起の中で、扉を開けない場合でも、低温を保持できる時間の目安は、冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1〜2日間としています。
もちろん、これはあくまで目安です。
外気温や、冷蔵庫の中に入っている食品の量などによっても変わります。
それでも冷蔵庫については、停電から数時間のうちに、食品をどう守るかを考えなければならないということです。
在宅避難という言葉も、今では珍しいものではなくなりました。
建物そのものに大きな被害がなければ、避難所へ移動するのではなく、住み慣れた家で数日間を過ごす。
そのとき、冷蔵庫を少しでも長く使えるかどうかは、暮らしを維持するうえで決して小さなことではありません。
太陽光発電が載っていても、停電時にそのまま電気が使えるわけではない
ここは、意外と知られていないところだと思います。
屋根に太陽光発電が載っていて、外では太陽が照っている。
それでも停電が起きれば、通常の太陽光発電は、まず電力会社の系統への送電を停止します。
停電している電線へ住宅側から電気が流れてしまえば、復旧作業を行う方々を危険にさらす可能性があるからです。
ただし、太陽光発電そのものが使えなくなるわけではありません。
日射があれば、「自立運転」という機能を使って、太陽光パネルがその瞬間につくっている電気を住宅内で使うことができます。
Panasonicの住宅用パワーコンディショナでは、自立運転時に最大1,500Wまで使用できる機種があります。
ただし、実際に使える電力はそのときの発電量によって変わります。いつでも1,500Wを使えるという意味ではありません。
私たちの答えは、「自動切替」と冷蔵庫の上のコンセント

そして、私たちが大切にしているのはここからです。
自立運転という機能が付いているだけでは、十分な備えだとは考えていません。
太陽光発電システムの中には、停電が起きてから、住まい手自身が操作して自立運転へ切り替えるものもあります。
災害が起き、停電し、家の中が暗い。
そんな状況になってから取扱説明書を探し、
「どのブレーカーを操作するのか」
「どのボタンを押すのか」
を確認する。
それでは、せっかく備わっている機能も十分に生かせないかもしれません。
そこで私たちは、停電を検知すると自動的に自立運転へ切り替わる「連系自立自動切替」に対応したパワーコンディショナを採用し、その機能をあらかじめ有効に設定しています。
当社で採用しているPanasonicの対応機種では、この設定を行っておくことで、停電時に住まい手が自立運転への切替操作をする必要がありません。
そして、その自立運転時の電気を使うためのコンセントを、あらかじめ冷蔵庫の上に設けています。
停電してから、長い延長コードを探すのではない。
パワーコンディショナのところまで行って、何か特別な操作をするのでもない。
停電が起きれば、日射があり発電できる条件であれば自動的に自立運転へ切り替わり、あらかじめ計画した冷蔵庫のコンセントまで電気を届ける。
非常時に、
「電気が使える」
というだけではなく、
「その電気を、何に使うのか」
まで、家をつくる段階で決めておく。
私たちは、その一つを冷蔵庫にしています。
「自動」であることにも、意味がある
私は、この「自動」というところも大切だと思っています。
災害が起きたとき、人は住宅設備のことだけを考えているわけではありません。
家族の安全を確認する。
外の状況を確認する。
スマートフォンで情報を得る。
場合によっては、近所の方のことも気にかける。
やらなければならないことが、一度に増えます。
そんなときに、
「太陽光発電を自立運転に切り替えてください」
という仕事を一つ増やすのではなく、家の側でできることは、家の側でやっておく。
停電を検知したら、自動で切り替わる。
そして、その電気を必要な場所まであらかじめ届けておく。
設備の性能だけではなく、非常時に「住まい手に何をさせないか」まで考えることも、住宅設計だと思っています。
ただし、冷蔵庫が必ず動くわけではない
一方で、できないこともきちんと知っておかなければなりません。
自立運転の上限が1,500Wだからといって、1,500W以下の家電なら何でも確実に使える、というわけではありません。
冷蔵庫をはじめ、モーターを内蔵した電気製品は、運転を始める瞬間に大きな電流が流れることがあります。
そのため、機器の組み合わせなどによっては、自立運転で使用できない場合があります。
また、曇天や朝夕などで太陽光の発電量が不足すれば、給電が止まることもあります。
つまり、この仕組みは、「停電しても、冷蔵庫が絶対に止まらない」というものではありません。
設備や冷蔵庫の組み合わせ、そしてそのときの日射条件によって、実際の動作は変わります。
だからこそ、カタログ上の数字だけで「使える」と考えないことが大切です。
蓄電池がなければ、夜は発電しない

もう一つ、大きな制約があります。
太陽光発電だけでは、夜は発電できません。
昼間に十分な日射があれば冷蔵庫を冷やすことができますが、日が沈めば、太陽光から電気を供給することはできなくなります。
ですから、太陽光発電だけの場合には、
昼間、発電できる時間に冷蔵庫を冷やす。
庫内温度を下げて夜を迎える。
翌朝、太陽光が発電を始めれば、再び冷やす。
そうやって、停電中の食品保存を少しでも長く支えることになります。
24時間、できるだけ途切れず冷蔵庫を動かしたいのであれば、蓄電池を組み合わせるという選択肢があります。
昼間は太陽光で発電し、その電気を蓄電池にも貯める。
夜は、その貯めた電気を使う。
そうすれば、太陽光発電だけの場合とは、停電時にできることが大きく変わります。
「付いている」ことと、「使える」ことは違う
そして、私が一番伝えたいのはここです。
太陽光発電を載せることと、災害に備えることは、同じではありません。
太陽光発電がある。
自立運転機能がある。
自動切替機能がある。
それだけでは、まだ設備の「性能」の話です。
停電したとき、その機能は本当に働くように設定されているのか。
その電気をどこへ届けるのか。
何を優先して動かすのか。
そして、住まい手が慌てなくても使えるようになっているのか。
そこまで考えて、初めて住宅の「備え」になるのだと思います。
コンセントそのものは、決して特別な設備ではありません。
けれど、
「停電したら、この電気をここへ届けよう」
と決めることは、設計です。
だから私たちは、冷蔵庫の上にコンセントを一つ設けています。
家には、何も起きていない日の仕事と、何かが起きた日の仕事がある

私たちは、自分たちが建てた家を、親しみを込めて「彼ら」と呼んでいます。
彼らの仕事は、晴れた日に心地よく暮らせることだけではありません。
強い雨が降った日。
地震が起きた日。
電気や水道が止まった日。
そんなときにも、そこで暮らす家族を守り、生活をできるだけ途切れさせない。
それも、家が果たすべき役割だと考えています。
冷蔵庫の上にある、一つのコンセント。
普段は、その存在を意識することさえないかもしれません。
けれど停電が起きたとき、太陽が出ていれば、自動で自立運転へ切り替わり、その一口まで電気が届く。
派手な設備ではありません。
それでも、私たちはこういう小さなところまで考えて、家をつくっていたいと思っています。
「未来の記憶を、築く家」は、何も起きていない日の豊かさだけを考える家ではない。
何かが起きた日にも、その家族の暮らしを支え続ける家でありたい。
自動で切り替える。
そして、コンセントを一つ、冷蔵庫の上に。
私たちが家をつくるときに用意している、災害への備えの一つです。

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